みずもり亭日誌

粥川準二の雑記帳

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さるさる日記
■2004/06/29 (火) ヒトクローン胚、「相談」か「根回し」か

 先週水曜日、ヒトクローン胚容認の方針が決まるという歴史的瞬間を見逃して、僕はそのとき何をしていたかというと、ガッコでアリストテレスの正義論(『ニコマコス倫理学』)を読んでいた。
翌日夕方、不正義が行なわれたらしい内閣府を訪ねて、先日の配付資料をもらおうとしたのが、そのとき対応してくれた職員に、「根回し」の件を尋ねてみた。職員は「え?」という表情。それを横で聞いていた別の職員がすぐに、参事官に説明させるように、と口を挟み、そのまま成りゆきで、外山参事官に直撃インタビューすることに。
 事前にこの方針をまとめたペーパーの内容がメールで主だった委員たちに送られたとの聞き及んだのですが、事実ですか、と聞くと、「どなたから聞いたのですか?」と聞いてくるので、「言えません」と答えると、「……ならこちらも言えないのですが……」と言いながらも、薬師寺会長は調査会の中の何人かの先生方に相談してきたことは事実です、ただ具体的にどのようなことがあったのかは現時点で私のほうからは言えない、と答えた。僕が、「相談」か「根回し」かというのは微妙ッスね、とたたみかけると、そうですね、とやや苦い表情で、確かに対立はあったが、私の印象では根回しのようなことはなかった、と言った。
 議論そのものを聞いていなかったので、あまりつっこめなかったのが残念。 以上、とりあえす電波少年的突撃取材のご報告。
 もっと真面目な報告を読みたい人は、各紙のほか、最相葉月さんの日記をどうぞ。僕自身は某専門誌に背景等を書きます。04.6.29
 
各紙
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20040624-00000094-mai-soci
http://newsflash.nifty.com/news/tk/tk__yomiuri_20040623it14.htm
http://www.nikkei.co.jp/news/main/20040623AT2G2300M23062004.html
http://www.sankei.co.jp/news/040623/sha120.htm
http://www.asahi.com/science/update/0623/003.html
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20040624-00000001-san-pol
http://www.tokyo-np.co.jp/00/tokuho/20040626/mng_____tokuho__000.shtml
なんでやねん日記
http://homepage2.nifty.com/jyuseiran/sunbbs8/index.html

■2004/06/26 (土) たいへん申し訳ありません……

カウンターが上がり続けていて、恐縮です。もしかすると、生命倫理専門調査会による人クローン胚容認についての僕のコメントを待ってくださっている方もいるかもしれません。たいへん申し訳ないのですが、しばらくはしっかりとしたコメントは書けません。感想ていどのものなら書けないこともないのですが……ご了承ください。(少しだけ泣き言をいわせてもらうと、ライター、学生の二重生活は思ったより忙しいです。)最相葉月さんが優れた論評をお書きになっているので、ご覧になってみてください。04.6.26

なんでやねん日記。
http://homepage2.nifty.com/jyuseiran/sunbbs8/index.html

■2004/06/20 (日) 近況(休日に聞く犯罪のお話)

●一昨日(金)、午後から性現象論研究。予習したつもりなのだが、あいかわらず難解。夜は犯罪社会学研究でミルトン・エリクソン。
●昨日(土)、午前中はガッコで犯罪社会学の講義を傍聴。専制君主機械における身体刑の一例として『監獄の誕生』の冒頭のダミアンの処刑、資本主義機械への移行期に起こった事件としてピエール・リヴィエール。「犯人のリヴィエールは、ジル・ド・レなどと違い、現在の凡庸な犯罪者たちに似ている」。『監獄の誕生』も『ピエール・リヴィエールの犯罪』も既読なので非常にわかりやすかった。午後、六本木に移動。アーク森ビルにて、安全・安心プロジェクト主催のジャーナリスト・セミナーに参加。触法精神障害者の問題について、精神科医の春日武彦氏が話すのを聴く。松沢病院の「処遇困難施設」の経験など興味深かった。会場に知人が多い。世間は狭い。
●なお、先日応募したジャーナリスト・コースは、正式登録者にはやはり大学生や志望者を優先するとのこと。当然の判断だと思う。実習などをお手伝いをすることになり、講義などにも参加させてもらえることになった。ある意味で希望通りになった。
●帰宅すると、ダニエル・C・デネットの『ダーウィンの危険な思想』(青土社)が届いていた。分厚さと難解さにげっぷ。あくまで性現象論で扱う『Freedom Evolves』を読むための参考書として買ったのだが、これを読むための参考書が必要そうだ(苦)。
●本日は自宅で、原稿、マッキンタイア、フーコー。04.6.20

■2004/06/16 (水) 近況(恐怖の頭脳改革)

●3限社会倫理学研究では、A・マッキンタイア『美徳なき時代』(みすず書房)第9章から第11章の半ばまで。僕が担当した第10章「英雄の物語」では、タイミングのよいことに、先日観た『トロイ』の原作であるホメロスの『イーリアス』についての言及があった。ホメロスにおいて死は純然たる悪であり、究極の悪は、死に続いて身体への涜聖が行われること、家族と共同体が全一性(integrity)を回復できるのは、埋葬儀礼を行うことによる、『イーリアス』における奴隷身分の状態は、死の状態ときわめて近く、嘆願者も自分自身を潜在的な死体あるいは奴隷にしている……と、マッキンタイアは『イーリアス』を例に説明するのだが、こうした物語を知らないわれわれには理解しにくい。僕は映画の1シーンを挙げながら、アキレス(ギリシャ軍の英雄的戦士)によるヘクトル(トロイ王子)の遺体への冒涜と、プリアモス(トロイ王)による嘆願を説明した。
●5限社会学基礎演習は休講。帰宅すると、アマゾンからDaniel C. Dennettの「Freedom Evolves」(ペーパーバック版)が届いていた。性現象論研究で次に扱う本である。ぱらぱらとめくって、あまりの難解さに戦慄。いま読んでいるフェミニズムと進化論(社会生物学など)の関係を扱った論文集もおそろしく難解だが、「Freedom Evolves」もかなりの難物のようだ。加藤秀一先生からは参考文献として、同じ著者の『ダーウィンの危険な思想』(青土社)を紹介してもらったので、インターネット古書店「日本の古本屋」で注文した。邦訳なのだが、これもかなり難解と思われる。
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/0670031860/qid=1087312298/sr=1-1/ref=sr_1_10_1/250-5530063-5736251
●なお性現象論研究に正式登録している院生は僕だけである。ほかの参加者は、高偏差値大学からわざわざ来ている博士課程やPDの優秀な女性たちである。ゼミのレベルは彼女らに合わせてあるのだろう、たぶん。明学の社会学研究科のなかでも、おそらく最もハードなゼミだ。はっきり言って、僕はかなり背伸びしないと話についていけないのだが、これを一年続ければ、僕の悪い頭にもかなり力がつくと思われる。
●音を上げてたまるかっつーの。04.6.16

■2004/06/14 (月) 近況(たまにはニュース紹介でも)

●東大先端研が主催する「安全・安心と科学技術」プロジェクトの「ジャーナリスト養成コース」に申し込んだ。開講されるのが水曜、木曜で、水曜の夜はゼミがあるため出られないので、申し込むべきか迷った。僕にとっていちばん都合がいいのは、担当講師である武田徹さんに頼んで、正式登録せずに聴きたい講義だけ聴くというパターンだが、それも甘えているようなので、自分にカツを入れるべく、まずは正式に履歴書と作文を作成して郵送しておいた。
http://www.anzenansin.org/corse/ja.html
●たまにはニュース紹介でもやっかな。
●生命倫理専門調査会で、日本産科婦人科学会から報告された生殖細胞(精子、卵子、胚)利用研究の実態は不明瞭だと難解も書いたが、それ以前に、体外受精等生殖技術の実態もそれほど明らかになっているわけではない。学会は全数の把握に乗り出すという。
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20040501i101.htm
●生殖技術を実施している医療機関独自の動きもある。
http://www.asahi.com/science/update/0607/003.html
●臓器移植法改訂は見送られる模様。国会議員は全員、小松さんの新作を読むべし!
http://www.mainichi-msn.co.jp/kagaku/medical/news/20040610k0000m010049000c.html
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4569626157/qid=1086530263/sr=1-1/ref=sr_1_10_1/250-8300314-5387425
●レーガン元大統領が死去したことにより、アルツハイマー病治療のためにもES細胞研究規制を求める声が高まっているという。超党派らしい。中絶反対のプロライフ派も仲間が病気になると転向か!? 
http://www.mainichi-msn.co.jp/kagaku/medical/news/20040608k0000e030078000c.html
●これまたどういう出自の受精卵なのか(遺伝病の患者を含むカップルから提供された?)気になる。
http://www.yomiuri.co.jp/science/news/20040610id26.htm
●生命倫理関連から関心が少し遠ざかっている自分を確認できる。04.6.14

■2004/06/13 (日) 近況(土曜だというのにドゥルーズ、自己責任論)

●昨日は土曜日だというのに午前中からガッコへ。S野先生の「犯罪社会学」の学部向け講義を聴講。専制君主機械(ドゥルーズ=ガタリ)における近親相姦の禁止と王族における容認、言語の持つ権力などについて。第1回目だけ聴いて以来なのでちょっとわかりにくかったが、刺激的だった。土曜日に都内で用事があるときだけでも出席すべきか。欲望論をやる必要性を再確認。先生や顔見知りの学部生、院生と挨拶して退出。
●御茶の水に移動。出版労連主催の出版研究集会。フリーランスの自己責任論について。パネラーは、イラクで拘束された安田純平さんのほか、ゲブハルト・ヒルヒャー氏、吉岡逸夫氏。「帰国してから、現場に入るための技術についての議論がほとんどなかった。大手メディアは、記者はホテルにこもり、現地人に情報収集させていて、それを記者の名前でレポートし、そのことを安全対策だと説明していた。それは報道機関として、ではなく、民間企業として説明しているだけではないのか」(安田さん、大意)。イラクでは、(1)まず3人(高遠氏ら)が拘束され、(2)次に2人(安田さんら)が拘束され、(3)2人(橋田氏ら)が殺された。その3つの事件の被害者に対する世間やマスコミからの「自己責任」を問う「バッシング」の強さは、(1)>(2)>(3)である。というのか、橋田氏たちはほとんどバッシングされていない。それは、橋田氏らは亡くなってしまったから、というのが大きな理由であろうが、それだけでなく、橋田氏はキャリアも長いし、テレビ局の仕事もやっていて、メディア業界に知り合いが多いこともあるのではないか、また、橋田氏が撃たれたことはプロフェッショナルの目から見ればミスである、という見解が出された。(1)と(2)でバッシングの強さに温度差が見られたのも、結局のところ、(1)の3人が「弱い」と判断されたからではないか。安田さんは、彼らに自己責任を求めた新聞社はその後取材に来たか、と質問されると、ないとのこと。結局、本気で自己責任を問うつもりだったわけではなく、ただの弱い者いじめ、勇気あるフリーランサーへのやっかみでしかなかったのではないか、と思った。終了後、飲み会。
●本日はマッキンタイアほか。04.6.13

■2004/06/12 (土) 近況(たまには取材されてみる)

●昨夜は近所の映画館で『アップルシード』を観ようと思ったら、もう終わっていた(泣)。仕方がない、どこかで再上映されるのを待とう。で、『トロイ』を観てしまう。まあ、『グラディエーター』の人気に味をしめたのであろう、古代スペクタクルものである。ギリシャ軍とトロイ軍との戦闘シーンなどさすがに圧巻。
http://www2.troy.jp/phase2/menu.html
●今日は近所で、ベテラン同業者の取材を受ける。ジャーナリストがジャーナリストを取材するというのはなんだかおかしいような気もしたのだが、いい仕事をしている人なので快諾した。なかなか誠実な人だった。期待していなかったのだが、謝礼もちょこっとだけもらった。一瞬で本代に消えたが。「カユカワさんに原稿依頼するように編集部に言っておきますよ」とのこと。うれしいね。
●そういえば、このあいだは『河北新報』に取材されたので、取材されることが続いている。誰かが言っていたが、取材されることは、取材のいい勉強にもなる。
●デスクの周囲を撮った写真を現像し、ゲラといっしょに某編集部に送付。帰宅して、性現象論ゼミの予習。性選択理論についてのおそろしく難解な英語論文。うーん、来週金曜日までに読みこなせるだろうか……。
●某誌編集部より原稿依頼。まだ自分が見捨てられていないことを確認し、ほっとする。04.6.12

■2004/06/10 (木) 近況(ライフワークとしてのノンフィクション)

●昨日は、2限演習はフーコー。6限コミュニケーション論は知的所有権についての世界社会フォーラムの文書について発表。情報量があまりにも少なかったので、僕のほうでかなり補足した。7限社会学理論研究はアリストテレス。
●『河北新報』からコメントの載った新聞が届く。うーん、やはりやや誤解を受けそうな感じがする。
●本日は自宅で雑用のほか、『ライフワークとしてのノンフィクション(仮)』という共著本のゲラチェックなど。うーん……他の著者の原稿も読んだのだが……僕の原稿はたぶんいちばん地味である。読み飛ばされる可能性がきわめて高い。また、読みながら自分で認めたくないことを認めざるをえない段階に僕がいることもわかってきた。僕は、アカデミズム(社会科学)の知識や方法論を取り入れたジャーナリストを目指して悪戦苦闘しているつもりなのだが……最近、アカデミズムにもジャーナリズム(または出版業界)にもなじめきれずにいる自分が浮かび上がってきてきたのだ。正直のところ鬱である。
●しかし鬱になっているヒマなどあるわけもなく、フーコーやらマッキンタイアやらアリストテレスやらエリクソンなどなどと格闘する日々が来週も続く。いくつか頼まれている原稿も書かねば。
●「♪Ah、胸の奥から/こみ上げてくる/この気持ちで/生きていくよ♪」(Blanky Jet City「Sea Side Jet City」)04.6.10

■2004/06/09 (水) 近況(しつこく補足)

●本日(正確には昨日)は、3限社会倫理学がマッキンタイア、5限基礎演習がギデンズ。そこそこといったところだが、とにかく眠い。
●先週水曜日のゼミについて、さらに(なぜかここで)補足。僕が担当したところ(『異常者たち』p160-166)でもう一つ気にとめておきたいことは、フーコーがここで用いた分析手法である。ピエール・リヴィエールもクロード・Cも、「事件」が起きた時期はだいたい同じころなのだが、それぞれが語られたテキスト(1836年と1864年)における「要素」の「機能」の違いにフーコーは着目している。あるいは「事件」あるいは「要素」の語られ方の変化といってもいいかもしれない。通常の社会科学的な分析においては、研究者は社会構造や社会的行為を分析対象として選ぶ。それに対してフーコーは、その時代その時代の人々が語ったことを比較・分析している。この方法はフーコーが『言葉と物』(残念ながら僕は未読)という著作で確立したもので、「言説分析」とも呼ばれ、1990年代に開花する「社会構築主義」の出発点になったという(赤川学「言説分析と構築主義」、上野千鶴子編『構築主義とは何か』勁草書房、に所収)。人が何かを他者に語るときには、語る内容だけでなく、語る主体の社会的ポジション(男性か女性か、支配する側かされる側か、等々)などによっても、語る主体の隠された利害関心や言説の政治的効果があらわになることがある。そんなことを覚えておくと、今後何かを読んだり考えたりするうえで、少しは役に立つかも。
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4480790454/qid=1086711750/sr=1-1/ref=sr_1_10_1/250-5530063-5736251
●宮城出身の人いますか? 6月8日付『河北新報』第2社会面で、遺伝子検査などにおける個人情報保護についての記事で、僕のコメントが載ったようです。なかなか熱心な記者だったのですが、それでもこちらの真意を正確かつ簡潔にまとめてもらうには、お互いに苦労しました。ご参考までに。04.6.9

■2004/06/08 (火) 近況(「成功」の論じ方)

●金曜日の性現象論ゼミでは、フェミニズムと社会生物学との関係について書かれた30ページほどの英語論文の内容を発表。準備に20時間以上かかってしまった。気合いを入れて臨んだのに、参加者は僕以外1人だけ(つまり先生入れて3人)。とほほ。しかし、それになりに濃厚なゼミになったと思う。終了後、目黒で別件の飲み会。
●土曜日は某研究会。科学史家の林真理さん(『操作される生命』NTT出版、工学院大学助教授)の話を聞いたのだが、小松さんの『脳死・臓器移植の本当の話』を電車の中で読んでいたせいか、ケンカ(誇張)を売ってしまう。いやもちろん冗談ですよ。林さんは、北海道で行なわれたADA欠損症遺伝子治療についての言説を分析することによって、先端医療にとって「成功」とは何かを論じた論文(『科学技術社会論』第2号、2003年10月)の抜き刷りを配布したのだが、僕は「なぜ遺伝子治療を題材に選んだのか?」と質問した。というのは、僕は同じ時期、「人倫研」のニュースレターで、クローン胚づくりについて賛否それぞれの立場から論じるという企画で、批判派の立場からガチンコ記事を書いており、やはりそこでは「成功」とは具体的に何であるかを論じたからだ(『人倫研ニュースレター』第9号)。僕に言わせれば遺伝子治療はすでに死に体で、僕自身も何度も書いており(『現代思想』2003年6月号ほか)、さらに何かを論じるためには相当の理由が必要であるし、また、その姿勢もあまりに「価値自由」的であるような気がしたからだ。林さんからは、自分は歴史家でカユカワさんのように使命感を持って現在を相手にしているわけではない、という意味の回答が返ってきた。うーむ、釈然としない。小松さんの新作を読んで、多くのアカデミシャンの価値自由的な態度(小松さんは例外である)に、これまで以上に違和感を感じるようになった。
●日曜日は原稿、雑用。
●月曜日、昼間は原稿、雑用、夕方には幕張で医師を取材、帰宅して夕食後、また原稿。午前3時すぎにまとめ終えてメールで草稿。風呂に入って仮眠。
●本日は7時半起床。雑用の後、ガッコの予定。04.6.8


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